- 日時 2022年11月30日
- 場所 氷見市
- 対象 医師・医療介護関係者
氷見市では、平成21年5月に氷見市医師会の下部組織として「氷見在宅医療連携会」が結成されました。現在9人の在宅医と、1私立病院がメンバーとして活動しています。
会が行う主な活動は、当番制代理看取りによる助け合いです。在宅医療の看取りの場面で、主治医が学会や旅行などで立ち会うことができないことが時々あります。死亡診断・診断書の発行が出来ない時に、患者の家族は困った末、死後に救急車を呼ぶこともあり、望まない蘇生や検死が行われたりすることもあります。このようなことを避けるために、グループ内の当番が主治医の代わりに死亡診断・診断書の発行を行い、看取りの失敗を防ぎ、結果、主治医の負担を減らすことを主な目的にグループを結成しました。
当番制代理看取りの具体的な取り決めは、土曜日曜・祝祭日・正月・お盆に当番を決めます。当番は必ず電話連絡がつくように自宅で休日を過ごすか、1時間で帰れる距離ならば携帯電話を持って出かけても良いこととしました。休日に看取りが発生し、家族から主治医に連絡が入り、その時に主治医が患者宅に行くことができない場合に、主治医は電話で当番に看取りを依頼します。当番は患者宅に赴き、看取りを行い、診断書を発行します。主治医は代理看取りになる可能性が考えられるとき、当番に前もって連絡をして、ICT連携ツールの「診療工房」を利用したり、ファックスなどで患者情報を当番に伝えます。事前に伝えられなかった場合は、代理看取り依頼の連絡時になるべく詳しく伝えるようにします。また、連絡の連携がうまくいかないこともあります。患者の家族から主治医にうまく連絡がつかず、間に入った訪問看護ステーションが当番に連絡して代理看取りとなった症例もありました。
実際に代理看取りが行われた症例数は、平成21年より30年12月まで6例、31年1月より今までに5例、合計11例です。13年余りで11例は少ない数字のように見えますが、在宅での看取りのトラブルが防がれ、主治医の面目が保たれて、患者や家族の在宅看取りのハードルを少し下げられたと考えています。主治医にとっては、休日に安心して出かけられるようになった恩恵はかなりのものです。当番は1年に10回ほど回ってきて、遠くに出かけることはできませんが、呼び出しを受けることは殆どなく、普段の休日と変わりなく過ごせるので、あまり負担になりません。会で正式に決めた助け合いの内容は代理看取りだけですが、在宅医療を行っていくうえで、いろいろな助けや協力が必要な場合があります。ほかのメンバーから求められた場合は、仲間意識をもって、できるだけ助け合うことにしています。
不安なこともあります。オリジナルのメンバー9人のうち、1人だけ代替わりで若くなりましたが、残りのメンバーは年齢を重ね、平均年齢が10歳以上あがり、高齢化が進んでいます。今後、今の活動を維持して、新しいことを取り入れていくために、意欲のある若い在宅医の登場を待っています。
【原稿執筆:高嶋 達 先生(氷見市医師会理事)】